給与明細の見方について

労働契約は「仕事をする(労働に従事する)」ことに対して、「給与を支払う(報酬を与える)」という契約です。給与明細は仕事の結果を確認する大切なものです。勤務状況に関すること、支給される給与の内容、そこから控除される内容が記載されています。自分自身の頑張った結果を確認し、また、社会人であることの証でもある税金や社会保険料についても知っておきましょう。

    POINT

  • ●勤務状況について確認しましょう。出勤日数や労働時間数に過不足はないか、残業時間数は正しく記載されているかなどを確認します。
  • ●支給項目について確認しましょう。基本給の他、どのような手当がいくら支給されているのか、また、残業手当や休日手当、深夜手当の計算方法に誤リがないかなどを確認します。
  • ●残業手当や休日手当、深夜手当の計算方法に誤リがないかなどを確認します。
  • ●実際に手元に支給される給料は、あらかじめ税金や社会保険料が、本来の支給額から差し引かれて渡されています。この差し引かれた額が控除額ですので、この控除項目についても必ず確認して、税金や社会保険料がどのくらい控除されているか知りましょう。また、その他に控除されている項目があれば控除の内容(目的)と金額を確認します。

給与明細の見方

給与明細には、会社がいくら支払ったのか、保険料がいくら引かれたのか、などが示されています。給与支払いなどの重要な証拠になるものですから、大切に保管しておくようにしましょう。

給与明細(記入例)

割増賃金の計算例

時給制で支払われる場合の例ですが、月給制の場合でも時間あたりに換算して割増計算されます。
く勤務時間が1日7.5時間で、時給は1,000円のケース>

残業手当(時間外割増)

●1日8時間を超えない勤務のとき
法定労働時間(1日8時間)の範囲内で、就業規則に定められた勤務時間(1日7.5時間)を超える場合には割増はないので、8時間を超えない30分の残業代は基本給(時給)のままの金額で計算して0.5時間×1,000円=500円となります。
●1日8時間を超える勤務のとき
法定労働時間を超える残業をしたときには、賃金は基本給の25%割増になります。
1.5時間の残業(合計9時間の勤務)をした場合は、30分は法定内残業(上記)、残りの1時間は法定労働時間を超えた残業となり、1時間×1,000円×125%=1,250円となります。
※ただし、月60時間を超えた分の時間外割増は基本給の50% 割増となるため、その場合には1時間×1,000円×150%=1,500円となります。

休日手当

休日労働は1日の所定労働時間すべてが35%の割増になります。しかし、週休2日制の会社の場合、2日のうちどちらか1日は法定休日とならず、休日割増の対象にはなりません。

深夜手当

深夜労働( 22時~翌5時の勤務)については基本給の25%以上の割増になります。
●深夜労働かつ時間外労働の場合
25%(深夜労働)+25%(時間外労働)=50%の割増率となるため、1時間×1,000円×150%=1,500円となります。

参考資料

時間外労働・休日労働と割増賃金

法定労働時間を超え、または法定休日に労働させるためには、あらかじめ延長できる時間数や、休日労働させることができる回数について、「時間外労働・休日労働に関する労使協定(36協定)」を締結しておくことが必要です。(労働基準法36条)

Q 残業手当が職務手当として固定額で支給になっています。
最近は残業が多く、休日、深夜に及ぶ日もありますが、
手当として固定額で支給する形は問題ないのでしょうか?



A. 月給制をとる場合、月給を1ヵ月の平均所定労働時間で除して時間額を計算し、その金額が最低賃金額を上回っていればOKです。
例:月給160,000円÷1ヵ月の平均所定労働時間(160時間)=1,000円>最低賃金885円

お給料をもらう時の決まりは?

通貨で・直接本人に・金額・毎月1回(以上)・決まった時期にと覚えておきましょう。

    賃金支払い5原則

  • ●通貨払い

    賃金は日本で通用する通貨で支払われなければなりません。(外国通貨・小切手はNG)

  • ●直接払い

    使用者は直接労働者に賃金を支払わなければなりません。これは賃金の中間搾取や、年少者の賃金を親が受け取ってしまうことなどを防止するためです。 最近は現金の手渡しではなく銀行振込も多いですが、この場合には「振込にしてもいいですよ」という労働者の同意が必要です。会社に給与振込口座を伝えることで、同意したとみなされます。

  • ●全額払い

    使用者は労働者の賃金全額を支払わなければなりません。労働者が会社に借金があるとしても、一旦は賃金を全額支払い、労働者はそこから返済するのが原則です。ただし所得税・住民税・社会保険料の天引きは認められています。

  • ●毎月1回以上払い

    使用者は毎月1日から月末までの間に、少なくとも1回は労働者に賃金を支払わなければなりません。

  • ●一定期日払い

    使用者は毎月1日から月末までの間で、明確な支払期日を定めなければなりません。例えば「毎月 10日 」など、日付を示すのが一番わかりやすい方法です。月給制の場合に「月の末日」といった決め方をしても差し支えありません。

賞与(ボーナス)

賞与は、労働基準法でいうところの賃金ではありますが、毎月の給料のように必ず支給が義務付けられているわけではありません。毎月の給料は、労働者が生活していく上で欠かせないものとみなされていますが、賞与はそうみなされていません。したがって賞与の支払いについて、金額などの具体的な定めが就業規則などで決められていなければ、賞与はもらえない場合もあリます。

退職金

       

法律には、退職金に関する規定がないので退職金は必ずもらえるというわけではありません。退職金がもらえるのは、就業規則などで定められている場合です。したがって、退職金をもらえるかどうかについては、各企業に確認してみてください。

最低賃金

正社員・パート・アルバイトに関係なく最低賃金が決められています。もちろん、性別・国籍の違いがあっても、会社は決められた最低賃金より安い金額で働かせることは基本的にできません。
最低賃金は、地域や産業ごとに違いがあり、毎年10月頃に見直しされるので自分の働いている都道府県の最低賃金を調べてみましょう。
地域の最低賃金(地域別最低賃金)と産業別の最低賃金(特定最低賃金)の金額が違ったら、高額の方を最低賃金とします。

会社の指揮命令に従って労働を提供すると、その対価として給料(賃金)をもらうことができます。賃金の支払いには5つの原則が定められていますが、そのうち「直接」と「全額」の原則が守られないことがありますので、注意が必要です。また、賞与(ボーナス)と退職金はよく耳にする言葉ですが、必ずもらえるものではないので、労働条件通知書などで確認しておくべき事項です。

    POINT

  • ●賃金は「もらえるお金(金銭債権)」ですが、借入金の返済や買い物の代金など、一般の「払うべきお金(金銭債務)」とは別格とされており、それらを天引き(相殺)することはできません。
  • ●労働条件通知書に「賞与あり」と書かれていても、会社の業績によっては支給されないことがあります。
  • ●労働条件通知書に「退職金あり」と書かれていても、実際に支給されるのは「勤続0年以上から」という条件が付くケースがほとんどです。「同じ会社に長く勤め続けたごほうび」と考えましょう。
  • ●近年、最低賃金は上昇傾向にあります。少なくとも自分の地域と産業の最低賃金は、こまめにチェックするよう心がけましょう。

地域別最低賃金の全国一覧

都道府県名 最低賃金時間額【円】 発効年月日
北海道 861 令和元年10月3日
青森 790 令和元年10月4日
岩手 790 令和元年10月4日
埼玉 926 令和元年10月1日
千葉 923 令和元年10月1日
東京 1,013 令和元年10月1日
静岡 885 令和元年10月4日
大阪 964 令和元年10月1日
鹿児島 790 令和元年10月3日
沖縄 790 令和元年10月3日
全国加重平均額 901 -
       

厚生労働省発表「令和元年度地域別最低四金改定状況」より作成

参照:https://www.mhlw.go.jp

Q 給与が月給制の場合、地域別最低賃金と比較する際は、
どのように計算したら良いでしょうか?

 

A. 月給制をとる場合、月給を1ヵ月の平均所定労働時間で除して時間額を計算し、 その金額が最低賃金額 を上回っていればOKです。
例:月給160,000円÷1ヵ月の平均所定労働時間(160時間)=1,000円>最低賃金 885円

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